生きることを諦めなかったコロ

自分が10代の頃、実家で初めて犬を飼いました。妹への誕生日プレゼントで「チロ」と名付けた犬でしたが、我が家に来てすぐに病死してしまいました。庭にお墓を作ったりとても悲しんだのを覚えています。

1年後、母方の祖父の家で飼っていた犬の「コロ」も老衰で死んでしまったのですが、それを機会に自分の家でも再び犬を飼おうということになりました。以前チロを購入したペットショップは親の仕事関係の知り合いで、動物病院も並行でやっているお店でした。信頼もしていたので再び同じペットショップで黒の柴犬を購入しました。祖父が飼っていたコロは自分が産まれた時から居て、思い出がたくさんある大好きな犬でした。新しく飼った柴犬には、コロの存在を引き継いで欲しい、コロのように長生きして欲しいという思いで「コロ」の名前をそのまま付けました。

そして、待ちにまったコロが家に来ました。小さくて可愛いくてたまらないコロを家族みんなで溺愛していました。しかし、家に来てわずか一週間、コロに想像もしていない異変が起きました。急に元気がなくなり、食べた物を吐いたり、明らかに具合が悪そうでした。すぐに購入したペットショップに連絡をして、獣医さんに診てもらいました。病名などは覚えていませんが、獣医さんの口からもう数日もたないと言われ愕然としました。普段冷静な両親も、以前のチロのこともあったせいか憤っていたのを覚えています。どうすることも出来ず、コロを家に連れて帰りました。二日後、コロは徐々に動けなくなり、夜になって震えたりしていて見ているのがとても辛いくらいでした。獣医さんが20時くらいに家まで様子を見に来てくれましたが、「今夜がヤマですね」と言われました。その日は、家族皆でリビングでコロと一緒に眠ることにしました。眠ると言っても心配でとても眠れませんでしたが、コロの衰弱はどんどん進んでいきました。自分達が見守る中、手足に力が入らないのか必死に這うように動こうとしていました。苦しそうに吐いたり、痙攣したり、見ていて本当に可哀想でした。もうダメだもうダメだと何度も思いました。

しかし、コロの体力も限界だと諦めかけていた瞬間、朝日が昇るのと同時に奇跡のような光景が飛び込んできました。コロが突然、手足をグーっと背伸びでもするかのような動きをすると急に元気になったのです。今まで何もなかったかのように動き始めて自分達に寄ってきて、自分は信じられない気持ちと嬉しさで一杯でした。獣医さんも説明が出来ない、奇跡としか言いようがないとのことでした。自分は諦めかけていたのに、コロは吐いても力が入らなくなっても必死で動いて生きようとしていたのだと思いました。コロはそれから15年、病気と老衰で亡くなるまで私たち家族にたくさんの思い出を残してくれました。あの時生きてくれて本当にありがとうと伝えたいです。