小言を聞いてくれた中型犬と癒しの小型犬

田舎の農家で育ち、広い庭には農機具を収納する大きな倉庫があり、畑に繋がっている扉のない後ろの出入り口に犬を繋ぎ、私は物心つく前から犬や猫に囲まれていました。
犬を繋いでおいたおかげで、裏から人が入って来たとき、近所の人か、知らない人か吠えて教えてくれるので、安心でした。
畑に連れて行った犬が、急な雷に気づきそわそわ落ち着きがなくなると、早めに車に乗り込んだ父は、雷が去るまで待ちます。
このように、実家の犬は番犬や農作業のおともをしています。

結婚後、犬や猫を飼ってきたものの、息子の喘息の影響で手放さなければならなかった猫は、実家で飼ってもらいました。
犬を飼うことになったとき、息子の成長に合わせ外でも飼える丈夫そうな中型犬をペットショップで選び購入しました。
昼間は外に繋ぎ、夜間は専用の1部屋で自由にさせ、ゲージの中で寝ていました。
昼間、十分に散歩させているせいか、知らない人にもほとんど吠えず、玄関前で寝ていた犬のがっちり体形に怖がる人もいました。
初めて訪問販売の人が来たとき、家に入ってこないように吠えてほしかったものの、犬に通じるはずがなく、玄関を開けると目に入った見知らぬ訪問者に呆れたことがありました。
役目をしっかり果たしていた実家の犬に比べ、人に慣れ過ぎたペットショップの犬は、ほとんど警戒心がありませんでした。
人の出入りが多い我が家で、吠えてかんでしまう心配がなかった犬を、老衰で亡くなるまで飼いました。
周囲への配慮が少なくて済んだ吠えない犬だった一方、友だち感覚だったのか、犬に話すことが多かった私の小言を小刻みに震えながら聞いてくれ、気持ちが癒されていました。
「2人でよく話しているね」と近所の人に言われていました。

次に飼った小型犬を、箱入り娘として可愛がっている夫は、デジタル機器を壊され続けても可愛くて怒れず、膝に乗せ一緒にパグ犬の動画を見ています。
来客が来ると尻尾を振り、飼ってきた犬の中で今回のパグ犬が初めて、大きな声で吠えながら玄関に走っています。
警戒心が全くない尻尾フリフリの姿では本物の番犬にはなれそうにないものの、誰からも好かれ癒されているのは確かです。
犬や猫が常にいる生活だった私は、飼うことに抵抗がない一方、動物を飼う習慣がなかった夫は、初めての体験がたくさんあったでしょう。
犬を飼い始めて18年が経過した現在、夫のほうが散歩に行く回数が圧倒的に多くなったうえ、パグ犬のほうから膝に乗っています。
かつてテレビゲームやパソコンに夢中だった夫は、腰や足が痛いときも一番に考えている犬からあまり離れず、かなり時間をかけて世話してくれます。

犬のおかげで、ストレスや運動不足が解消され、心身ともによい効果を得ています。
毎日抱きしめ、小さな子どもをあやしているように頬擦りしている姿の夫は、犬にべったりの生活が続くでしょう。